東京・代官山のSPRING VALLEY BREWERY(スプリングバレー・ブルワリー)さんで行われた『FRESH HOP FEST 2015(フレッシュホップフェスト2015)』というイベントに行ってきた、
……訳ですが、ホップと言えば、びーるに欠かせない原材料のひとつですよね?
みなさんは、ホップに関心があったりするでしょうか?
それでもボク程度が知ってるホップなど氷山の一角で、その種類は100以上もあるんだとか。
そして品種改良やらで年々その種類も増えてると聞きます。ドイツやアメリカ(だっけ?)にはホップ専用の研究所もあるそーですしね。
今回のFRESH HOP FEST 2015は、キリンビールさんのCSV活動の一環ということらしいですが、その辺を中心に思ったことを少し語ってみたいと思います。
そもそも「CSV活動」とは、「Creating Shared Value=共通価値の創造」という意味で、キリンビールさんのホームページを見てみても「社会との共有価値の創造を目指していきます。」とあります。
その中のびーる事業として、今回のイベントの一環である「キリンが応援する遠野のまちづくり」、「Tono Beer Experience」そして「FRESH HOP FEST 2015」という活動があるんですね。
具体的にどのような活動なのかと、公式ホームページを覗いてみると、
現在の遠野のホップ生産量はピーク時の4分の1、近い将来、国産ホップを使用したビールが飲めなくなる危機に直面しています。
Tono Beer Experienceとは、地域活性化を目指す遠野市が、地元の大切な資産であるホップの魅力を最大限に活用して未来のまちづくりに取り組むものです。遠野を「ホップの里」から「ビールの里」へ。街や市民の皆様とキリンの協働がスタートしました。
(「公式ホームページ>キリンが応援する遠野のまちづくり」より。)
とあります。
岩手県遠野市というのは、国内ホップの名産地ですが、高齢化・過疎化によってホップ畑の存続・生産が困難に。そこでキリンビールさんの助力を得て立て直しを図ろうという趣旨のようです。
ホップは基本的に寒冷地での栽培が適しているとされています。
日本国内では、北海道、岩手県、長野などが有名どころと言えるかと思います。(東京都内で栽培している事例もありますが。)
世界的な名産地とされるドイツのハラタウ地方も北緯は高いですね。
ホップは10m前後もの高さに育つツル状の植物で、収穫時には「育ったツルを丸ごと」伐採してから毬花と呼ばれる花・実のような部分を摘み取るそうです。
また、植えてから最初の一年は、収穫量・品質などの面で不安定なんだとか。
気候面にも左右されやすい植物だそうで、これだけの情報でも、育成が楽な植物ではないような気がします。
プラスチック製のホップ。
そんなホップですが、近年のクラフトビールブームの影響もあり、ビールメーカー、バイヤーなどの間で獲得競争が盛んに。その契約内容も生産農家との直接で、3〜5年の複数年契約が主流なんだそうです。収穫したホップをその都度買うのではなく、畑ごと年単位で押さえちゃったりする訳ですね。
そんな状況から、ネルソンソーヴィンやアマリロなどの人気ホップは、いわゆるマイクロブルワリー(小規模醸造所)まで回ってこない……なんてうわさ話も、びーるマニアレベルですら聞く機会が増えている印象があります。
そりゃー、いいホップが手に入れば、美味しいびーるが作れる可能性は上がるでしょうし、ホップの名前に釣られてびーるを注文してしまった経験があるのはボクだけではないと思います。(「○○ビール ネルソンソーヴィンver.」とか)
既存のびーるにホップを追加するビアインヒューザー。
「サマー」という聞き慣れないホップが追加されるということで飛びつきましたが何か?
メロンみたいな味わいのホップでした。
これから市場でも見かけるようになるんでしょうか?
前述のホップ獲得競争のようなことは、もちろんビジネスベースとしてのつばぜり合いであったりもするでしょう。
ホップ農家にとっても、複数年契約や指名買いなどは、運営面でプラスな部分も多いと思います。
しかし、人気のホップが売れるからと、それらばかりを偏って栽培するようになってしまえば、生産量の少ないホップの枯渇・絶滅にも繋がりかねません。これは過去の農業の足跡からみても懸念される事態ですよね。
今回のイベントで、とある関係者筋にホップ争奪戦・買い占め、そして遠野のSCV活動の件のお話を伺ったところ「絶滅しそうなホップの保護の側面もある」、「一社単位での買い占め争いではなく、共同購入のようにできないものか」、「(畑を確保することで)品種改良による新たな可能性」などの意見を聞くことができました。
ホップ買い占めの話などを聞くと、短絡的に「なんだまた大手のマネーパワーで中小いじめか┐(´ー`)┌」みたいに思っちゃうところもありますが、大手さんだからこそできる部分として考えられている側面でもあるようです。
これは、今回のイベントに複数の醸造所さんが協賛されてる状況からも、ポジティブな要素として捉えられてる部分の表れではないかと思えなくもなかったり。
特にボクの中では、CSV活動(=共通価値の創造)という行動原理があることを意識していませんでしたし、単純にマネーゲームとだけしか見ていなかった部分は反省しなければなー、という気分になりました。
SPRING VALLEY BREWERY以外のびーるもラインナップされてました。
どこかしら、(特に大手さんの)びーるは「工業製品」として受け止めてしまうきらいがあります。
どこかから買い集めてきた材料を使い……使わされ、大きな工場ラインで伝言ゲームのように流れ作業で出来てしまうイメージ。
作業に関わった人も「この工場で何を作っているのかは解らない。え?ビールだったのかい!?」って、ブラックコメディな世界なんじゃないかと想像したりしませんか?正直ボクは盲目的にしてしまってる部分がありました。
ですが、今回のイベントおよび、ここ何度かキリンビールさんの醸造の方などとお話する機会もあったおかげで、その思いも徐々に氷解していきました。
確かに大きな組織だと、伝言ゲームになりがちな部分もあるかもしれません。
ですが、必ずしも事務的に、機械的に、商業的な作業をしているという訳ではないようです。
ボクが中の方とお話しさせていただく機会を得たのは、「飲んでたらたまたま隣の方がキリンビールさんお醸造の方だった」という(それこそコメディな)全くの偶然でしたが、もし思い込みややっかみに近い感情でボクのようにブラックコメディな世界だと思ってる方がいらっしゃれば、今回の記事で少しでも考えの幅が広がる機会になればいいなーと思わなくもないです。
改めて、びーるは食品です。
ここまではホップの事例を切り口としてお話しましたが、キリンビールさんでは、ホップのみならず、麦でも栽培や製麦(モルト作り)まで関わられているとのこと。
また、(キリンビールさんのお話ではないですが)醸造過程で出たモルトの搾りカスを肥料に使用する、などの話も聞いたことがあります。
びーると言うと、醸造や商品棚に並んだ商品に目がいきがちですが、びーる造りとは、農業・醸造という一連のサイクルの成果物であるのかもしれませんね。
と、そんなことまでも考えさせられてしまったイベントでありました。
【参考リンク】
■キリンが応援する遠野のまちづくり>Tono Beer Experience
■キリンホールディングス>社会との共有価値(CSV)
■Spotlight>国産ホップを危機から救え!「ビール版ボージョレ・ヌーボー」解禁
■Globis知見録>“ビールのまち”遠野をつくる ―生産者×企業が生み出す新たな地方創生
■びあなび.com>ビールに使われる代表的なホップの種類・品種
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