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2014年9月24日(水)。
この日は朝からびーる関係のSNSの話題はこれ一色でした。



「ヤッホーが、キリンと記者会見するんだってよ!重大発表らしいよ!」


この時点では断片的な情報だけで、買収やらなんやらの憶測だけが飛び交っていました。
一夜明けた今、ある程度情報が出そろったようなのでこの狂想曲を妄想気味にまとめてみたいと思います。



記者会見での発言から今回の出来事を整理してみた。

まず参考にしたのはこちらの記事。

苦戦キリン 地ビールに出資(ワールドビジネスサテライト)[動画あり]
ヤッホーとキリンビールが業務・資本提携を発表した記者会見に行ってきました!(クラフトビール東京)
キリンが“あの”クラフトビール会社と提携(ビール女子)


これらの記事から今回の出来事をかいつまむと、


9年連続の増収増益(年率40%で成長)と業績が好調すぎたヤッホーさん。
あまりに好調すぎて自社工場の生産能力が足りなくなり、「うちのびーる委託で作ってよ!」と数社に持ちかけたところ、様々な条件から提携相手として選ばれたのがキリンさん。
「うちもクラフトビールに興味あるよ!ヤッホーさんの販売戦略にも興味あるよ!十数億円出資して33.4%の株買うし!仲良くやろうよ!」と、言ったとか言わないとか。

こうして2社は手を取り合いましたとさ。どんどはれ。



…というのが、概要のようです。(テキトーすぎすみませんw)




ヤッホーさんの背景。

爆発的な売り上げを記録し、「今の設備じゃ醸造が間に合わない!」と醸造先を探していたヤッホーさんですが、2014年の春には自社でも設備投資をしていました。

ビール製造販売のヤッホーブルーイング(北佐久郡軽井沢町)は、5月までに佐久市小田井の工場に醸造用タンクを増設するなどして、生産能力を現在の1・8倍に引き上げる。投資額は過去最大の約4億円。大手コンビニエンスストアとの取引開始などによる需要急増に対応する。 工場の敷地内に、高さ約10メートル、容量約40キロリットルのタンク8基を増設。新たなタンクは、現在独立している麦汁の1次発酵、2次発酵、熟成といった工程を一貫できるため、生産効率が高まる。(「47NEWS>ビール生産能力1.8倍に ヤッホーブルーイング」より。)

記事全文のリンク先がNot foundなのが気になりますが、このニュースは「2014/04/10 09:32 【信濃毎日新聞】」のもの。
5月が完成予定で、今回の提携が9月ですので、今回の提携話は結構最近のものじゃないかと邪推してしまいます。


ヤッホーさんの工場内より。


余談になりますが、ヤッホーさんの井手社長が、
アメリカのクラフトビール業界で最も成功しているサミュエルアダムスは、市場の17.5%を占めている。自社で作るだけで無く、積極的に外部の会社に製造を委託しているサミュエルアダムスのビジネスモデルをヤッホーでも取り入れていく。(リンク先の記事を意訳)

といった趣旨の発言をされたと聞き、以前「業界1位じゃないと意味が無い」というお話をされていたことを思い出しました。

「例えば日本一高い山…といえば富士山ですが、では2位は?…では、日本一大きな湖は…琵琶湖ですが2番目は?」という例題を交えつつ「このように2位以下は印象に残りづらいんですよね…だからヤッホーは業界1番を目指さなきゃ!」といった内容をおっしゃっており、今回の提携もそのマインドが活かされているような気がしました。

少なくとも今回の提携で、他のクラフトビール醸造所を周回遅れ以上にぶっちぎってしまった印象をもたれた方も多いのではないでしょうか。(どれくらいの量を委託するのかは知りませんが。)





キリンさんの背景。

9年連続の増収増益のヤッホーさんとは対照的に、キリンさんは「今年上半期の出荷量が同期比7%減少」しているんだそうです。

世間一般的には「若者のビール離れ()」の影響で、ビール業界全体の出荷量は9年連続で縮小しているらしく、何か好転の起爆剤を必要としていたのでしょう。

その起爆剤をクラフトビールに見い出していたのは「SPRING VALLEY BREWERY(スプリングバレーブルワリー)」というプロジェクトにも表れているんじゃないかと思います。

当ブランドでは、キリンビールの伝統と最先端の醸造技術により、自然と共存したイノベーティブなクラフトビールづくりに挑戦します。「ビール通を唸らせ、ビールが苦手な人もはじめての出会いに感動するビール」をコンセプトに、上質な苦味と、甘味、酸味、香り、コクの究極のバランスを実現した、新次元のクラフトビールを多彩なラインアップで提案していきます。(「公式>「SPRING VALLEY BREWERY(スプリングバレーブルワリー)」プロジェクト始動」より。)


これは「キリンブランドでクラフトビール造っちゃえ!」て感じのプロジェクト。
このプレスリリースは、2014年7月16日ですが、近年のクラフトビールブームを参考にしようという動きは元々あったんだと思います。

キリンさんでいえば、「GRAND KIRIN(グランドキリン)」のプレスリリースが2012年6月13日ですから、「キリンがwwwクラフトビールwww急だなおいwww」という話でもないんですよね。

そもそもキリンビール横浜工場併設のパブブルワリー「スプリングバレー」ではヴァイツェン他、「いわゆる大手のピルスナー以外のビアスタイル」も飲めますので。

スプリングバレーのびーる。


更にいえば、ライバルのサッポロさんでは「百人のキセキ」(2012年3月22日第一弾発売)、サントリーさんでは「ザ・プレミアム・モルツ〈香るプレミアム〉」(2014年5月27日発売)、アサヒさんの「スーパードライ」に至っては「2014 World Beer Cup」というクラフトビールマニアも一目置くコンペでInternational-Style Lager部門金賞受賞を果たしていますし、大手さんのクラフトビールを巡る戦いは、すでに火蓋が切られていた状態ともいえるでしょう。





ヤッホーさんとキリンさんの近未来を妄想してみた。

「キリン側は十数億円でヤッホーの株式33.4%を取得」との報道もあり、「ヤッホーさん、キリンさんになってしまうん?キリン味のよなよなエールになってまうん?」といった心配をされている方々もいらっしゃるようですが、これらの記事を読む限りでは、まだそのステージではないようです。



また、WBSの記事では「キリン側は今回の提携でクラフトビールの製造のノウハウを吸収したい考えです。」とありますが、前述の通りキリンさんにも元々クラフトビールを造る技術はあると考えられます。

ですが、キリンさんがこのまま「クラフトビール」を造っても、世間の目はどこまで行っても「キリンの新しいビール」という認識のままで、とても停滞打開のブレイクスルーとまでは行かないのではないでしょうか。
「大手は大手風の/クラフトビールはクラフトビールメーカーが造るもの」そんな固定観念が市場にはありますし、その固定観念を破る機会が訪れたのかもしれません。

その辺の葛藤の打開策をヤッホーさんに見た、というのがキリンさん側の狙いのひとつではないかと邪推してしまいます。

キリンさんが「すでにクラフトビール業界の地位を盤石にしているヤッホーさんなら、今の大手ビール業界の停滞の闇を取り払ってもらえるのではないか…」と考えたかどうかは知りませんが、キリンさんにとっても「えくすかりばーを てにいれた!」みたいなところが無い訳でもないかと。(以下自粛)

ヤッホーさん工場内の倉庫。


仮にヤッホーさんの商品が、キリンさんの販売ルートで、キリンさんと同等クラスの量を、全国津々浦々の販売店に陳列され、何かしらのキャンペーンを打たれたとすれば?

…なーんて夢を見ちゃうのは尚早ですか?w





ヤッホーブルーイングのブランド戦略への影響。

クラフトビール業界でも、ヤッホーさんのブランド戦略は群を抜いていると思います。
マーケティング戦略、イメージ戦略、PR戦略…言い方や方法論はいろいろあるでしょうが、わかりやすいのは「パッケージやネーミング」でしょう。

大手ビールっぽくない「水曜日のネコ」のネーミングとパッケージ。



「水曜日のネコ」や「前略 好みなんて聞いてないぜSORRY」といったネーミングや、新商品の「僕ビール、君ビール。」のゆるいパッケージなどがその草分けと言えます。





「大手のキリンさん」では二の足を踏みそうな斬新な戦略ですし、きっと世の中ではこれを「ベンチャー的な」という表現をするんでしょう。これらのスタンスをキリンさんが導入するとは思えませんね。

たぶん目に見えるデザイン的な面において、お互いがそれぞれの土俵に立ち入る事は無いでしょう。(パロディ・コラボ的な商品はあるかもですが実質的な意味で。)

とか言いつつも「ヤッホーテイストなデザインのキリンビール缶」を想像するとワクワクしますけどねw

そんな中で個人的に気になっているのは「お酒マーク」の存在。

「丸の中に《お酒》の文字」のヤーツ。


これはジュースなどのノンアルコール飲料と間違われないように、各社自主基準で入れているらしいのですが、もちろんキリンさんの多くの商品にも導入されています。

しかし、あくまでも自主基準だからでしょうか、ヤッホーさんでは導入しない傾向のようです。(個人的にも入れない方がデザイン的に美しいと思うので入れて欲しくはないんですが。)

ですが、もし前述のように、キリンさんの販売ルートで売られる事となったらどうなんでしょう?
まあ、グランドキリンのパッケージも「お酒マーク」無記載のようですし、考え過ぎかもしれませんけど。





ヤッホーブルーイングは今後、どこに舵を向けるのか?

今回の話題には賛否両論見られました。

ネット上では主に「ヤッホーがヤッホーでなくなってしまう」という危惧が多く見られた気がします。
その視点は「味が変わる」「経営が変わる」「クラフトビールを捨てたのか」「思想より資本主義か」「大手の流通方法では品質的不安があるんじゃね?」などなど様々。




今後のヤッホーブルーイングが、強大な力を得たクラフトビールの盟主として君臨しつづけるのか、それとも新たなる大手ビールの新勢力として歴史を切り開くのか…いずれにしても今後の動向にも注目が集まりそうですね。





ビール業界にビッグウェーブが訪れる?

クラフトビール界隈でも委託醸造の話はたまに聞きます。
そもそも自社工場を持たないクラフトビール会社さんもいくつかあります。

なので、今回注目すべきは委託醸造ではなく、「今回の件を受けて、今後の大手・クラフトビール業界はどうなっていくの?」でしょう。

キリンさん以外の大手は追随するのか?
クラフトビールメーカーが買収・吸収・子会社化されはじめるのではないか?
大手がクラフトビールに本気になるのではないか?
だとすれば、現状のクラフトビールブルワリーに勝算はあるのか?

…などなど妄想はつきませんが、今回の件は「たかが委託醸造」以上に大きな波紋を産む可能性があるということですよね。


キリンビール横浜工場内。


(ここまで大きな意味で)大手ビール会社と、クラフトビールメーカーが手を組むというのは、これまでパンドラの箱でした。

…ですが今、箱は開かれた。

禁じ手では無くなったこの手法が紡ぎ出す未来は一体どんな世界なのでしょうね。





【公式ホームページ】
ヤッホーブルーイング
キリンビール

クラフトビール東京
ビール女子
ワールドビジネスサテライト



【蛇足】
以上、珍しく時事ネタの妄想まとめ記事でした。

いちお、妄想ついでに、
単体で「ビール離れ()」打開の最前線に送り込まれることがありませんように。
クラフトビールという言葉が一人歩きしませんように。
品質に妥協がありませんように。

切にお願いしたいところです。

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