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三連休の最終日、2014年11月24日(月・祝)。
東京は有楽町にある日本外国特派員協会(通称:外国人記者クラブ)で行われた、JBJA第二弾記念イベント「世界に伝えたい日本のクラフトビール」に参加してきました。




「世界に伝えたい日本のクラフトビール」とは?


そもそもこのイベントは、

ビール業界に風穴をあけるクラフトビールブルワリー! 
これまで大手企業の寡占市場だったビール業界、そこに風穴をあけるが如く立ち上がる地域密着型、小規模醸造の日本のクラフトビール。ここ数年その勢いを増しています。
長期低迷が続く日本のビール市場の一筋の光と言っても過言ではありません。
味の設計にこだわりをもつブルワリーが増え続け、嗜好性の強い消費者の心を捉えています。
今回のイベントでは今、注目されるクラフトビール界のブルワリー代表4名をお招きし、緊急首脳会議を開催します。

日本のクラフトビールの未来は?! 
各社の取り組みや見解を紐解きながら、ブルワリーと消費者を繋ぐビアジャーナリストが
「世界に伝えたいクラフトビール」とはどのようなビールか?に迫ります。
参加者のみなさんと共に考え、熱く語らう貴重な機会です。
記者会見スタイルで行うビアジャーナリストアカデミーOG・OBによる鋭い質問も見所です。
また第二部では各社のビールを試飲しながら、各首脳(パネリスト)や藤原ヒロユキとカンファレンスを兼ねた交流会も予定しております。(「peatix>緊急首脳会議開催「世界に伝えたい日本のクラフトビール」」より。)

その首脳(パネラー)4名は、
・山田司朗さん(日本クラフトビール株式会社 代表取締役)
・菅原亮平さん(株式会社M’s Kitchen [Rio Brewing & Co., ]  代表取締役)
・朝霧重治さん(株式会社協同商事 コエドブルワリー 代表取締役社長)
・鈴木真也さん(横浜ベイブルーイング株式会社 代表取締役 兼 醸造責任者)

そして、
議長(聞き手)として、藤原ヒロユキさん(日本ビアジャーナリスト協会 会長兼、ビアジャーナリストアカデミー学長 ビアジャーナリスト)を加えた5名で行われました。


このビルの20階です。

四者四様のびーる造りスタンス。


今回は「如何にしてブルワリーを作るのか。」が大きな柱となって話が進みました。 パネラーの皆さんは、それぞれ独自のブランドのびーるを作っていますが、そのバックグラウンド…というよりは、「ブランド設立までの過程」が大きく異なります。

コエドブルワリーさんは、大規模の自社醸造工場を持ち、自社ブランド製品を国内外に流通させるという、言ってみれば王道の経営スタイル。

横浜ベイブルーイングさんは、小規模醸造のブルーパブ(パブ内の併設施設で醸造し、主に自社内のパブで売る方式)での経営方針。

日本クラフトビールさんは、初めから工場を持つことを計算に入れず、コンセプトを持ち込み、委託でびーるを作る「コントラクト・ブルーイング(CONTRACT BREWING)」という方法で作るという戦略。

M’s Kitchenさんは、バー経営からスタートし、飲食店経営の拡大と共に自社ブランドのびーるを委託醸造という形で実現。


…という四者四様の個性。

この機会でなくとも、この4者が集えば、各々が、なぜ、どうやって、ブランドを確立して行ったのか、という焦点で話が進むのではないでしょうか。





コントラクト・ブルーイングと言う手法。びーる造りを始めるには?


さて、壇上ではいきなり「ブルーパブ開設の準備金は2千万円」「工場まで作ると1〜2億円?」「醸造設備は海外からの輸入が多いので、為替的に今は逆風」など、生々しい会話が飛び交います。

この話の流れは、多くのオーディエンス的には雲の上の存在だったのではないでしょうか?
数億とか数千万円と言われてもイマイチ現実感のない話ではありますよね。
その空気を読んだのか、次第に話題は「びーるを作りたいと思っている人はどうやって作るべき?」という展開に。

ここで「コントラクト・ブルーイング(ファントム・ブルーイング)」が主題として話が展開して行きました。

先ほども書きましたが、「コントラクト・ブルーイング(ファントム・ブルーイング)」とは、自分自身では醸造所を持たず、他の醸造所の施設を借り、びーるを造るという委託醸造のこと。
施設・設備にかける初期投資が必要ないので、最低限の資本金で醸造活動が可能というメリットがあります。

また、メリットは費用面だけではなく、醸造所それぞれの得意分野を活用する事ができるという面もあるようです。
ただ醸造施設を借りるだけでなく、そこのブルワーさんに協力を仰ぎ、作ってもらう方法でもある訳ですね。
例えば、ピルスナーを造りたければ、ピルスナーを得意とする醸造所に委託を依頼するれば良い訳です。
それは他のビアスタイルにも言えますし、施設的な面でも同様です。
タンクの大きさや、やりたい醸造に向いた設備という視点で委託先を探すというのも理にかなっていると言えるでしょう。
原材料の産地に近い、なども選択する理由のひとつになるでしょうね。

一方、デメリットとしては、現在のクラフトビールブームもあり、生産計画に空きが無ければ請け負ってもらうのも難しい為、安定した生産が難しいかもしれませんし、日本国内の場合は、文化としてのコントラクト・ブルーイングが定着していない事もあり、一朝一夕には話が通らない部分もあるらしいです。

それがネックである……という話ではありませんでしたが、パネラーの方の醸造先も、もちろん日本国内で委託されている方もいらっしゃいますが、醸造家の方との縁やタイミングもあり、ベルギーなどで造られる例もあるようです。


記者クラブのマーク




日本らしいクラフトビールとは?


「アメリカンクラフトと言えばホップを沢山使っているよーな?」といった漠然としたイメージすらジャパニーズクラフトにはまだ無いと言えるでしょう。

そんな疑念へと話は進んで行きましたが、ここで興味深かったのは、この話題でもパネラー各々に様々なスタンスが見られた事でした。

「山椒やゆずなど日本独特の原材料を使えば〜」
「特定のビアスタイルを極めていけば〜」
「ラーメンのように、元は他国のものでも続けて行く事で、日本のモノとして認識されるのではないか〜」

……などなど。

ブルワー視点としても、いきなり突飛な方法でびーる醸造ができる訳ではないので「ビアスタイルの基礎をしっかりできるようになった先に、オリジナリティが産まれる」というのは全員共通の共通見解であるようでした。

また、文化的側面にもなりますが、風土に適したびーるを造るというアプローチも展開。
アジアなどの高温多湿な土地では、例えばバーレーワインのような重いものではなく、ドリンカビリティの高い軽く飲めるタイプのビールが好まれるでしょう。

「日本で飲むのに適したびーる」というのもジャパニーズクラフトビール確立へのキーワードになりそうですね。


※パネラー陣の中では、コエドさんのサツマイモを使用した「紅赤」、日本クラフトビールさんの柚子や山椒を使用した「馨和 KAGUA」などは好例ではありますが、日本のクラフトビール全体を冠するびーるであるかと言えば現時点では難しいと思います。





ホームブルーイングは底辺を広げる?


「底辺が広がるとトップのレベルも上がる」というのは、どのカテゴリーでも当てはまると思います。
びーるの場合は「ファン(飲み手)を増やす」の先に「醸造する人を増やす」という方法論が的確かもしれません。

いわゆるホームブルーイングのことですが、アメリカではホームセンターのようなお店があり、ホームブルーイング用の機材から、ホップや酵母まで手軽に入手できるそうです。
日曜大工ならぬ日曜醸造ですね。
そして、そのホームブルーイングを経て、起業する例も少なくありません。

しかし、日本の場合は法律で1%以上のアルコール醸造は禁止されています。

いくらマイクロブルワリー(小規模醸造)が法的に可能になっても、ブルワーになる為のハードルは決して低いものではないと言えるのではないでしょうか。

また、自分で造る事を覚えれば「舌が肥える」人たちが増えます。
素材の味や、発酵具合などにも敏感になり、「びーるを造れるんだ!すごい!!」ではなく「(自分よりも)美味しいびーるが造れるんだ!すごい!!」という評価に進化する事は想像に難くないですよね。




ビールのライバルは水である?


「若者のビール離れ」という言葉にも代表されるアルコール摂取人口の低下。
飲みニュケーションに対する嫌悪感のような文化的側面もあると思いますが、先進国においては健康志向という側面もあるそうで、ヨーロッパなどではミネラルウォーターの消費量が増えているんだそうです。

このお話の中で印象的だったのは、「飲酒機会が減るという事はクラフトビールにとっては追い風」という発言。
それは、例えばこれまで毎晩100円くらいのビール飲料を飲んでいた層が、週に一度の特別な日としてクラフトビールを選択するようになるのではないか、という論法でした。

確かに、「たまに飲む一杯としてクラフトビール」という選択肢はありだと思いますし、個人的にもこの発想は面白いものだと感じました。





蛇足的雑感。


今回のまとめは、時系列で発言をまとめるとしっちゃかめっちゃかになりそうだったので、意訳と独自解釈多めで書かせていただきましたことをお詫びします。
テーマとしてはコンストラクト・ブルーイングの話題が多くを占めていた印象があり、振り返ってみても、びーるマニアの方々への新しい方向性が示されたような気さえしています。

この他にも、「例えば、“フルーツの名前+エール”などというネーミングは直球すぎるので、コエドさんのようにネーミングにもブランディングの意識を持つべき」や「海外展開も大事だが、もっと国内で飲んで欲しい」など、ちょいちょいと心に残る発言もありましたが、大筋とは少し話がズレるので、その辺はまたどこかの機会で。


会見中の様子。


今回、会場には100名強のびーるマニアな方々で埋め尽くされましたが、みなさん固唾を飲んで話に聞き入っている姿が印象的でした。
あまりの静かさに咳すらできないような雰囲気ではありましたが、それは変な緊張感ではなく、妙に温かい空気感だったのは、びーる関連のイベントだからだったのでしょうか。(ウェルカムドリンクで軽く一杯やってたからかもですが。)

後日のSNSなどを見る限り、概ね好評を得ていたようですが、ボク自身もこーゆーお話を聞く機会ってのはなかなかあるものでもないですし、とても楽しかったです。

ブルワーさんや経営者の方々がどんなことを考えてびーるに携わっているのか、また、これからどうしていこうとしているのか。
想像で埋めていた部分が、実際の声として聞けた部分もありましたので、とても勉強になりました。

今後もこのような機会があれば参加したいと思います。




【公式ホームページ】
日本ビアジャーナリスト協会
日本クラフトビール株式会社
株式会社M’s Kitchen
株式会社協同商事 コエドブルワリー
横浜ベイブルーイング株式会社

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