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2015年3月19日(木)。
サッポロビールさんと、キリンビールさんが「クラフトビール参戦?」について、こぞって記者発表を行いました。

今回は、この話題について、テレビ東京さんのワールドビジネスサテライト(以下「WBS」)という番組でも取り上げられていたので、その報道に沿い昨今の「大手さんのクラフトビール参入」の話題をまとめつつ、つまみ食いして行こうかと思います。

そこそこ引用もしていますが、動画もありますので、まずは下記リンクをご覧いただいた方がわかりやすいかもです。

WBSニュース>クラフトビール 大手メーカー参入の狙い


サッポロビールさんの動向。

WBSさんの記事によると、
サッポロビールは「クラフトラベル」というブランドで5月から商品を販売します。サッポロビールの時松浩営業本部長は小規模メーカーのクラフトビールは「どこが作っているか分かりづらく、安心感がない」と、大手の安心感を加えた「ナショナルクラフト」という考えを打ち出しました。
とされています。

「クラフトラベル」とは、サッポロビールさんの商品ラインナップカテゴリーみたいなもので、「クラフトラベル」シリーズらしいですね。

ネーミングはおそらく、サッポロビールさんの主力商品「黒ラベル」からの踏襲じゃないかと思います。(アサヒさんは「ドライ」シリーズですね。商標登録とか調べたら面白そうです。)

第1弾「柑橘香るペールエール」はフルーティーな香りと深みのあるコクが特長。5月26日から東京23区内のサッポログループの飲食店などで先行販売し、6月9日からサッポロのインターネットショップで購入できる。350ミリリットル缶3本入りで864円から。(「どうしんweb>クラフトビール サッポロは「クラフトラベル」で勝負」より。)

「第1弾」ということは、シリーズ物は確定と見ていいでしょうね。(年内にもう2種類出す予定だとの報道もあるようです。)

そしてこのビール(シリーズ)は、WBSさんの動画によると、醸造はサッポロビールさんではなく、傘下会社として新設される「ジャパンプレミアムブリュー」で行われるんだとか。(「ナショナルクラフト=プレミアムビール」なの?)

ちなみにお値段は、350ml缶で1本288円だそうです。


※完全に余談ですが、この記事を書いている2015年3月時点で、「クラフトラベル」を検索するとクラフト用紙のラベルシールがトップに上がる仕様です。そのうち塗り変わるのでしょうかね。


「ナショナルクラフト」?

また、サッポロビールさんでは、クラフトラベルシリーズの立ち位置として「ナショナルクラフト」という呼称を打ち出しました。

WBSさんの動画によると、
(クラフトビールは)どこが作っているのか分かりにくい、安心感が担保できない。
ビールを楽しみたい(という要望)に応えるクラフトと、ナショナルメーカーの安心感をくっつけた(用語である)。
Q.クラフトビールの定義が難しいなか、さらにナショナルクラフトという言葉だが?
A.地ビールとかクラフトという「通好み」では成長性がない。エントリー層には、大手の安心感が担保されるのが非常に重要。

と、報道されていました。(一部修正しました。)

「通好み」と表現されていましたが、びーるマニア的には、クラフトビールブームの市場は年々拡大しているとゆー認識が大きいのではないでしょうか?

ですが、大手さんにとっては、今のクラフトビールブームは、マニア向けのニッチマーケットでしかないのかもしれませんね。
「エントリー層」という言葉が、「クラフトビールブーム」に向けられた物なのか、「ナショナルクラフト」として新規市場を開拓するつもりなのか。まあ、似て非なる物なのか、同じ物の別称なのかは時代に委ねられる部分かもしれませんが。

それらの思惑は置いといて、「ナショナルクラフト」とは、びーるマニアの間での俗称である「大手が造るクラフトビール」と同義と捉えていいと思います。



ナショナルクラフトは、クラフティと呼ばれない為の牽制?

「ナショナルクラフト」という新用語を提案して来た背景には、アメリカなどで囁かれる「Crafty Beer(クラフティ・ビール)」という蔑称が日本で定着する前の予防線と取る事もできそうです。

Craftyとは「ずるい。悪賢い。」と言った意味の英単語で、「大手ビールメーカーが、クラフトビールブームに乗っかろうとして(後出しじゃんけんのように)造った “クラフトビールっぽいビール”」といった意味で使われているようです。

特に日本の場合、「地ビールブームの失敗」という歴史の後、小規模醸造所(マイクロブルワリー)が中心となって、ようやく実を結ぼうというところまで来たクラフトビールブームに大手ビール会社が乗っかろうとしている……と見る目も少なくないので、「そりゃーまさにクラフティじゃねーの?」って感じで、ちょっとした話題になっている側面もあるでしょう。

まして日本は判官贔屓的な文化もありますしね。

いずれマニアの間では「大手は大手のフィールドでやってろ。こっち見んな。」みたいな感情論が見え隠れしている雰囲気もあるように感じます。

クラフティという単語自体ポジティブじゃないですからね。
極力避けたいというのは当然でしょう。


キリンビールさんの動向。

こちらもWBSさんの記事では、
大手の中で先駆けてクラフト事業に本格的に着手したキリンビールは、東京・代官山に醸造所を併設した専門店「スプリングバレーブルワリー」を来月オープンします。飲む直前にホップやフルーツなどの風味を加えてカスタマイズできる専用ビアサーバーも開発し、「体験型」の提供方法でビール魅力を伝える狙いです。2020年にクラフトビール市場シェア1位を目指します。
と書かれています。

以前から「SPRING VALLEY BREWERY」プロジェクトを展開していたキリンビールさんですが、今回は完成が見えて来た代官山工場の内覧発表会といったスタンスのようでした。

プロトタイプじゃないのが飲めるらしいですね。


WBSさんの動画を見てもらうと分かりやすいのですが、醸造設備機材の中で何が起こっているかが見えるように透明な素材を使ってみたり、いわゆる「ランドル」と呼ばれる装置(に近いもの?)で、びーるにカクテルのようなバリエーションを付けたりと、「びーるの新たな楽しみ方」を提案するようなスタンスにも感じられました。

ここではランドルとして紹介しましたが、動画内では「ビアインフューザー」と紹介されていましたね。
現時点で両者の違いについて、ボクにはよくわかりません。


【参考リンク】サンクトガーレン>ビール用語辞典>ランドル



キリンビールさんは、ハーフ&ハーフや、フローズンなど、飲み方の提案を行って来た企業という印象がありましたので、個人的には「おー、そうきたか。」と素直に関心してしまいました。
WBSさんの動画の中でも「かつてないビール体験ができる体験型・参加型の店舗」として紹介されていましたね。

コメントとして、
ビール自体の魅力を上げるプロジェクト。(ビールの)総市場を拡大することが必要。
と仰ってました。


アサヒビールさんとサントリーさんの動向。


アサヒビールさんは、
世界の多様なタイプのビールを手軽に味わえる、ひと手間加えたアサヒのクラフトマンシップ。(「公式>アサヒ クラフトマンシップ」より。)
を展開していますし、スーパードライのバリエーションもある意味「クラフトビール参入」なのかもしれません。

ドライポーターとかもありますしかなり多様な印象。



一方、サントリーさんは、
ナショナルブランドのところが“クラフト”とするのは、やはりクラフトビールはその地域でできないと意味がない。
との姿勢を見せているようです。

いわゆるクラフトビールの定義のお話になりますが、サントリーさんに関してはクラフトビールブームとの線引きに敏感な様子のようです。

視点としてはクラフトビールブーム後押し派と似たような視点とも取れますが、「クラフトマンズビア」シリーズも出してますし、この辺がダブルスタンダードなのかどうなのか。

「クラフト」言っちゃってますが。




びーるのみたい。的感想。

とまー、WBSさんの報道を追っかけてみましたが、まとめとして個人的な感想を。

クラフトビールブームが生み出している市場は、大手さんにしてみたらニッチマーケットなのかもしれませんが、それでも魅力的に映っているのかなーと感じました。
今回の報道で紹介されていた4社は、それぞれ独自の方針を打ち出してい(るように報じられてい)ますが、それが「クラフトビール」という定規で見るべき物なのかはやはり疑問が残るところです。

定義の曖昧なクラフトビールという単語を担ぎ上げている時点で、何を語っても的外れな気がしないでもないですが、広告戦略的には「ナショナルクラフト」を打ち出したサッポロビールさんは、うまいこと切り抜けようとしているようにも感じます。

(少なくとも日本国内では)定義が曖昧なんだから、大手さんがクラフトビールを名乗ったからって間違いではないんですけどね。(合致してるとも言わないけど。)

広告的な意味で「クラフトビール」という言葉に引力があると思いますが、大手は大手なりの横綱相撲をとってもらいたい気持ちがない訳ではないですし、あまり言葉だけ先行させても「味に自信がないのか」と見られかねないのではないですかね。

まあ、主張にあるような「(クラフトビールは)どこが作っているのか分かりにくい、安心感が担保できない。」ってのは、小規模醸造の多様化がクラフトビールブームの根幹にあることを理解してないようにも感じますし、(定義の曖昧さの間隙を縫うようなやり口で)ナショナルクラフトという言葉を使ってエントリー層をクラフトビールブームから遠ざけようという意思すら感じられるようで、びーるマニア的には不愉快にも感じた部分でもありました。

てゆーか、昨今の食品系工場での不祥事などがニュースになってるのに「安心感」が……とか書き始めると話が大きく逸れそうなのでこの辺で止めときますが、それだけの自信と結果があってのことなのでしょうかね。しらんけど。

または「だからクラフトビールではなく、ナショナルクラフトだって言ってんだろ!」と言われ、どうにも会話にならない感じになりそうなので、ちょっとアレです。
ナショナルクラフトという言葉が浸透するかどうかは……、今語らなくても、ま、いいかw

ともかく、どの層を狙って、どんな戦略を用いるのかは、今回の報道だけではよくわかりませんが、クラフトビールブームは、地道に美味しいびーるを造り上げて来たその結果であることを思い起こして欲しいなあと思います。

クラフトビールだろうがナショナルクラフトだろうがクラフティだろうが「美味しいびーるがそこにある。」これが原点だと思いますし、名前負けしない美味しいびーるをよろしくお願いしたいところです。




【公式ホームページ】
サッポロビール
キリンビール
アサヒビール
サントリー

【参考リンク】
びーるのみたい。>「クラフトビールの定義」に関するごちゃごちゃをゆるくまとめてみた。(クラフトビールとは?)

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